まちに開かれた優しい木の空間

農のある風景や、活発な市民活動が魅力的な川崎市宮前区の向丘地域の出張所の改修計画。

出張所で行われている多様な地域活動に合った、温かく居心地のよい空間を目指して改修を行った。併せて、木材利用が森林や地球環境の保全につながることを壁面のイラストで表現している。

工事前には、参加者がつくった「小さい私(の人形)」を建物模型のお気に入りの場所に挿入するワークショップを開催した。改修計画への興味を高め、多くの人が完成後の現地に訪れること、また工事前からそれぞれが思い入れのある居場所をつくるきっかけとなった。


<各居場所の設えについて>
多世代が気軽に立ち寄れる居場所、人や活動がつながる拠点を目指して、木材による優しい空間を内外に設えている。

「象さんベンチ」はエントランスから入ってすぐにある、モニュメント的な形のベンチ。
腰掛けるだけでなく、足を延ばして座ったり、子供の読書テーブルにもなるようにした。立ち上がりの際の手摺にもなる小カウンターもついている。

「まちの図書コーナー」は切り妻の家のような形をした本棚が並ぶ図書コーナー。
傾いたカウンターの上に本をのせて立ち読みしたり、新しく入った本を掲示したりできる。イベント時には本棚を移動できるよう、可動も固定も可能なようにしている。

「学びパネル・木のお話のパネル」
エントランスに設置した学びパネルには、町と木材と森のつながりをイラストで表現、木材利用が炭素の固定化や森林保全につながることを訪れる人が感じられるようにしている。地域で採れたケヤキ材を利用したベンチの壁には、木がベンチになるまでの歴史をマンガ形式で表現し、ベンチを身近に感じ長く大切に使われることを願った。

「木の申請窓口」は永く親しまれてきた既存のカウンターを利用しながら、窓口に向かった時に木の優しい雰囲気が感じられるよう腰下壁や側板を木質化した。

「縁側舞台」はバス停とつながる小広場横のピロティにつくった、イベントの舞台にもなる縁側。
出張所の様子が外の通りにもにじみ出すよう、内部と連続するような空間にした。

「風まちテラス」はアプローチ奥の落ち着いた空間に設えたテラス。
既存の植栽をふんわりとした雰囲気の花木に植え替え、風を感じてゆっくりできる居場所にした。


DETA

  • 所在地:川崎市
  • 用途:区役所
  • 構造:木造
  • 改修範囲床面積:約200㎡
  • 完成:2023年
  • 構造協力:ハフニアムアーキテクツ
  • 撮影:辻瞳
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